家のリビングで寛いでいると、窓の向こう側を誰かが横切った。
泥棒?
妻、「今日から外壁塗装が始まるって言ったでしょ!」
そうだった。
外壁塗装が始まるとは聞いているのだが、音が全然聞こえて来ない。
妻、「貴方が居るから、家の裏側の塗装をしてくれているのよ」
家の裏側を見に行くと、業者さんが額に汗して作業をしていた。
私、「塗装はいつから始まるの?」
妻、「とっくに始まってるわよ」
私、「全然、塗料の匂いがして来ないね」
妻、「まだ、下塗りだからよ」
昼の休憩時、挨拶がてら業者さんにお茶菓子を持って行き
私、「これは下塗りですか?」
業者さん、「いいえ、上塗りです」
私、「えっ上塗りなの?」
業者さん、「匂いが気にならないでしょ」
私、「はい」
全くしないわけではないのだが、塗料の鼻をつく嫌な匂いは全くしない。
外壁塗装をしてくれている業者さんは、日焼けはしているものの、塗料の付いた作業服を着ていなければ塗装職人とは思えない。
私が抱く塗装職人は、休憩時にシートの上で雑魚寝するイメージなのだが、実際はスマホで時間をつぶし、我々会社勤め人と何ら変わらない。
妻が用意した灰皿は、使われた形跡がない。
私、「タバコは吸わないのですか?」
塗装職人は、塗料が入る一斗缶を指差すと、火気厳禁と書いてあった。
大学生の息子が帰って来た。
塗装職人、「おかえり」
息子、「ただいま」
私、「おかえり」
息子、「・・・」
息子は父親である私には反抗的だが、塗装職人さんには挨拶をする、どうしてだ?
妻、「あの塗装職人さん、〇〇(息子のこと)と同じ大学を出ているからよ」
ヤンチャなイメージとは対照的に、我が家の外壁塗装をしてくれた塗装職人さんはインテリだった。